在来工法について
在来工法は”日本に昔からある工法”という意味で、木造軸組工法とも言われます。軸組とは、文字通り軸で組んだという意味で、柱や梁などを組んで造った建物という意味です。
その起源は縄文時代の竪穴式住居にまで遡り、柱を立て、真っ先に屋根を作るという工程は基本的に今も変わっていません。
これを長い年月をかけて発展させ、庶民でも手軽に建てられるように工夫したのが在来工法です。布基礎という連続した基礎を用い、10cm角ほどの比較的細い柱を使って建てる事によって、安価にしかも丈夫で長持ちする住宅を実現したわけです。
完成した在来工法の住宅は、一見壁で支えているように見えますが、実は壁は強度には殆ど貢献しておらず、実際に家を支えているのは柱や梁といった軸組なのです。
つまり、壁も何もない骨組みだけの状態で、強度的にはすでに完成しているということ。視覚的には弱々しい印象を受けますが、筋交いや金物などを適切に使う事で、巨大地震にも耐える強靭な住宅を実現しているのです。
一般に在来工法は、基礎の上に土台を置き、そこへ柱を立て、屋根を乗せます。まず屋根を作ってしまえば雨や雪でも作業できますし、木材が雨ざらしになるのを防ぐ利点もあります。木材が濡れると、狂いが生じて住宅性能を大幅に低下させる恐れがあるため、とても理にかなった施工ステップです。
この段階ではまだ床は作られていないのが普通です。床や壁は後から作られるのですが、すでに構造用の柱や筋交いがあるため、どうしても隙間が生じやすく、これが隙間風の原因になっていました。
また、壁の柱と柱の間の空間が煙突状になっていることから、そこが外気の通り道となる現象も起こります。
つまり、壁の内部が外気とつながっているため、暖房による温度差から壁や床下に結露(水滴)が生じていたのです。
窓ガラスに水滴が付くのと同じ現象が壁の中や床下で発生し、土台が腐ったりシロアリを呼んだりといった問題も指摘されていたわけです。
このような「隙間が多く風通しが良い」構造自体は、蒸し暑い日本の夏を涼しく過ごすには理に叶った構造なのですが、反対に冬は寒く、また部屋全体を暖房するという現代の生活様式には合わないものになっていたのです。
そこで最近の在来工法の住宅では、断熱気密性を高めたり、壁の中の空気の流れを遮断するといった工夫が盛り込まれたものも多く見られます。
耐震性能も大幅に向上し、現実に阪神大震災では平成以降に建てられた新しい在来工法の住宅では殆ど被害が出なかったことが知られています。ただし、中にはこのような問題を改善することなく、コスト競争に走っているケースも散見されますので、注意が必要です。
在来工法の利点としては、柱で支えているため壁自体は強度に関係ない場合が多く、リフォームの自由度が高い事が挙げられます。壁を打ち抜いて窓や出入り口を作る事さえも可能です。
2×4住宅では、あらゆる壁が構造上の大きな役割を担っているため、壁の位置を変えたり開口部を開けたりといったリフォームは困難です。
住宅の寿命も延びていますので、親から子、孫に住みつなぐ場合、リフォームが容易である在来工法の特性は、今後大きなメリットになると言えます。
在来工法(木造軸工法)のメリット・デメリットについて
在来工法の具体的なメリットとデメリットを並べてみましょう。
<在来工法のメリット>
- 工法が伝統的なので木造住宅を売りにするハウスメーカーのほとんどが対応できます。そのために業者の選択肢が広くなります。
- 業者の多くがこの工法を採用しているため、材料が豊富で揃えやすくなります。
- 耐震性を向上させるために近年では壁量を増やす傾向がありますが、出入り口の幅である開口幅を大きく取ることには支障はありません。
- 部分的には難しいこともありますが、将来の変更や改造などに対しては対応力が優れています。
- 法規問題に差し障りがない限り、将来的にも増築は難しくない。
- 柱・梁あらわしの真壁造りができるため木の良さを表現できる。
- 真壁造りにより木の良さである調湿効果が期待できる。
メリットに比べるとデメリットはうんと少ないのですが、挙げられるのは次のような点です。
<在来工法のデメリット>
- 大工の手間料が高くつくためツーバイフォー工法より見積価格は高くなる。
- 耐震に対しては金物を適切に使用すればツーバイフォーに比べてもそれほ見劣りすることはないが揺れの大きさについては劣ることが否めない。
- ツーバイフォーに比べて工期が長い。
以上在来工法(木造軸工法)のメリット・デメリットを見てきましたが、良否の判断を下すのは、木造住宅のもう一方であるツーバイフォー工法の長所・短所を見てからのことになります。